競馬のクッション値とは? 影響・有利な脚質や予想への活用法 

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JRAが2020年から発表を始めた芝のクッション値。馬の走りへの影響や有利な脚質はどうなのでしょうか? 予想への活用法を検討します。

筆者 競馬歴20年 メルマガマネードラゴン馬券塾を発行

競馬のクッション値とは? 

JRA公式サイト
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クッション値とは、ゴール前の直線で、芝に重りを落とし、衝撃の強さを数値化したものです。

数値が大きいと、モノや馬の脚への衝撃は大きめとなり、馬場は硬いといえます。数値が小さいと、衝撃はわずかとなり、馬場は柔らかめだと言えます。

この部分をうまく説明していないサイトや動画が多いようです。まずは、クッション値大=脚への衝撃大=馬場が硬い、を頭に入れておくと理解がスムーズです。

ヒント クッション値の高低で混乱しやすいのは、例えばテニスコートのクッション値が50前後なのに対し、ソファのクッションのクッション値は、0〜1と考えられ、イメージと逆だからではないでしょうか? クッションは、足で踏んだときの衝撃がごく小さいので、数値が小さくなるのです。

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クッション値をJRAが発表した、狙いは何なのでしょう?

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クッション値については、競馬雑誌・ネット・動画などで、さまざまな分析が発表されており混乱気味ですが、まず、JRAがどんな意図で測定を始めたのかをつかむべきです。

従来の馬場状態は、良・稍重・重・不良の4段階ですが、稍重・重・不良のちがいや、実際の状態が分かりにくいというファンの声がありました。そこで情報公開を進めているJRAは、まず含水率の公表に踏み切っています。

しかし、良馬場については「硬い」「重い」「軽い」など、専門家のその場限りの発言にファンは振り回され、分かりにくい状況が続いていました。そこへの対応がクッション値の公表です。クッション値は、基本的には良馬場で参考にするもの。JRAも公式サイトや解説動画で、複数回「良馬場」と言及しています。

従来の区分稍重・重・不良
新たな数値高← クッション値がカバー →低低← 含水率がカバー →高
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上の図のように、クッション値は、含水率と連続した、馬場の硬さを測る数値だととらえるのが、JRAの考え方です。

クッション値は、上の表のように、5段階に区分されます。そして、8〜8.9と9〜9.9でかなり配当傾向が異なることがわかっています。

そこで、9に境目を設置し、下のようにシンプルに考えると、わかりやすいでしょう。

芝の状態特良(9)やや稍重・重・不良
指標高← クッション値がカバー →低低← 含水率がカバー →高
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2021年の弥生賞の日、中山の芝のクッション値は10.2。脚への衝撃が大きめの硬い馬場。わかりやすく言うと「特良」の馬場でした。

クッション値が高い「特良」の馬場の場合、どのような馬券を狙うべきなのでしょうか? 多くの方が、種牡馬の特性と結びつけようとしていますが、現状、これといった傾向は取れていません。はっきりしているのは、「特良」の馬場では、人気馬が強い、逃げ先行馬が強いということです。

  • 特良(クッション値9以上の硬い馬場) … 人気馬、逃げ先行
  • 稍良(クッション値9未満の柔らかい馬場) … 人気馬・人気薄が互角、逃げ先行差し追込が互角

ヒント スピード指数が普及した現在、人気馬=時計が速い馬です。

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実際に、クッション値10.2(このページでいう「特良」)の弥生賞では、人気の逃げ・先行馬が強く、差ししかできないワンデイモアは、3番人気7着でした。

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その日1日の流れを見ても、比較的人気馬が好走しています。

脚質は、逃げ・先行馬が大半を占めています。

一方、3月21日の阪神は、クッション値が8.9と小さく、柔らかめで「稍良」といえる段階でした(芝は重の発表)。力が要る馬場のため、前にいけない馬が、スタミナを生かした差しで、逃げ・先行馬とやりあえる状況です。

結果は、人気順こそ人気馬が比較的健闘しましたが……

脚質は、差し・追込天国となっています。

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クッション値については、現在のところ、下記の内容が確かに言えると考えられます。

芝の状態特良(9)やや稍重・重・不良
馬券←人気馬、逃げ先行有利(9)人気・人気薄が互角逃げ先行差し追込が互角→逃げ先行有利
指標高← クッション値 →低低← 含水率 →高
弥生賞(10.2=特良)逃げ・先行の人気馬が上位(結果
高松宮記念(予測9.0=境界線)人気サイドも差し決着
阪神大賞典(8.9=稍良)人気薄の差しが健闘(結果
※高松宮記念は雨が降り続けたため、クッション値は予測。

お断り クッション値が9より小さく「稍良」と判定された場合、含水量を元にした馬場状態は、稍重・重・不良ことも多くなります。

道悪(稍重・重・不良)の馬場では、差し・追込馬のトップスピードに上限が生じる結果、原則として逃げ・先行馬が有利になります。同時に、雨が降る前まで外差しや中有利の馬場だったとしても、降雨で馬場差がなくなる分、距離損のない内を走る逃げ・先行に追い風が吹きます。ただし、道悪では、逃げ争いが激化することもあり、その場合は差しが決まります。

以上は、あくまで結果に影響する要素の何割かの部分です。例えば、ディープインパクトなら、馬場が硬い日でも道悪でも差してきますし、道悪に強い血統なら、雨の日でも差すことがあります。

表全体として、差し馬・追込馬の活躍が少なく見えますが、競馬全体としては、良馬場(このページでは特良・稍良に分類)での開催が多く、差し・追込は一定数活躍しますし、注目度が高い重賞レースほど、自力で差す脚を持った馬がそろう傾向です。反面、2020年以降の重賞では、差し馬が多いノーザンF産の馬に不利な、道中緩まず脚が溜まりにくいペースが増える傾向も出てきています。

クッション値と種牡馬の関係は?

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クッション値を種牡馬と結びつける人が多いですが、現状ではデータ不足。言えることは、ほとんどありません。

「人気馬」「逃げ先行」「差し追込」のような大まかな区分であれば、短い期間でもサンプルは十分です。しかし、種牡馬の場合、クッション値が発表されてから時間が経っておらずサンプルが少なすぎるため、まだ言えることはありません。

また、クッション値の切り分け方は、人によってまちまちです。切り分ける数値によって、同じ種牡馬が、硬い馬場(クッション値=高)巧者に分類されたり、柔らかい馬場(クッション値=低)巧者に分類されたりと、あいまいな部分があります。さらに、同じ種牡馬の産駒を、関東馬と関西馬で分けると異なる傾向が出るなど、統計として成り立っていない部分があります。

しいて言えば、次のことくらいは言えるかも知れません。

硬い馬場(特良)に強い
・ディープインパクト(瞬発力とスピードがいきる競馬場に強い)
・ダイワメジャー(サンデー系らしい高いスピード能力と先行力)
・ドゥラメンテ(動きが素軽く、身のこなしが柔らかい産駒が多い)
柔らかい馬場(稍良)に強い
・エピネファイア(豊富なスタミナをいかせる中長距離戦が得意)
・キングカメハメハ(時計の出る馬場から力がいる馬場までこなす総合力)
・オルフェーヴル(スピードより、スタミナが求められる舞台で好結果)

ただ、上のような種牡馬ごとの産駒の特徴は、クッション値を研究しなくても分かっていたことです。

これまで、種牡馬の研究は、距離、コース、天候、脚質など、多様な角度から行われてきました。しかし、クッション値の場合、距離もコースもごっちゃまぜの数値です。いまのところ、種牡馬については、過去の研究を重視し、クッション値から導かれた仮説に飛びつく必要は、当面ないように感じます。

JRAがクッション値を公表したのは、故障が出る馬場への批判をかわすため?

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JRAがクッション値を公表したのは、日本の競馬は馬場が硬く、馬を壊しているという批判への反論という見方があります。

確かに、JRAの作成した表には、海外の競馬場のクッション値が記されています。12以上の段階もあるため、必ずしも上の見方は正しくないように感じますが、実際には中央競馬でも7から10の数値がよく出ます。このことから、硬い馬場批判への対応の可能性も考えられます。

また、実務の問題として、海外の馬がJRAのレースに出走を検討する場合に、自国の芝との比較がしやすくなるメリットもあります。

クッション値の落とし穴

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クッション値には、いくつかの落とし穴があります。

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クッション値の最大の欠点は、馬場の中央を測定していることです。クッション値のは、ゴール前の直線をハロン棒(200mおき)ごとに計測しますが、計測位置は写真のように馬場の「中」にあたります。

4コーナーから直線にかけては、馬場の内・中・外で馬場状態が分かれ、内の先行馬が残る絶好の馬場、外差し馬場などが、予想の決め手となります。クッション値で分かるのは、なんと「中」だけ。このことからも、クッション値は、限界がある数値だと分かります。

クッション値の第2の欠点は、当日の馬場変化に対応しないことです。クッション値は、開催前日の午前9時半と、開催当日の6時半のみの測定です。そのため、レース中の降雨や、晴天による馬場の乾きによる変化は、反映できません。

クッション値の第3の欠点は、既存の要素に代わる、新しい観点を提供できるか微妙だという点です。スピード優位の馬場、力が必要で差し・追込が台頭する馬場というような要素は、すでに前日や当日の馬場観察で、予想に生かしている人が多いです。専門家の発信に頼らず、初心者が数値をもとに判断できるのは前進ですが、その数値は馬場の「中」(内や外でない)の状態しかわからない、欠陥品とも言えます。

クッション値は、以上の欠点と、まだ統計的にサンプルが少ないという欠点を踏まえた活用がカギになります。

重賞・メインレース・特別戦の予想に、クッション値をどう利用するか

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重賞・メインレース・特別戦の予想に、クッション値はどのように利用したらよいのでしょうか?

重賞・メインレース・特別戦は、出走メンバーの力が接近していることに最大の特徴があります。そのため、スピード指数や近走の着順だけで予想できるのは、メンバーが薄くなる傾向があるGⅡ戦や、少頭数になった特別戦くらいです。

G1はじめ、大半のレースは、適性、騎手、仕上げによる微妙な変動幅こそが、予想の要になります。例えば東大の入学試験では、受験生の英語や数学の力にほとんど差はありません。それでも合否が決まるのは、出題された問題が得意かどうか(適性)の部分が大きくなります。

競馬における「適性」は、下の図のように理解できます。

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「適性」とは、コースの基本的な傾向(例えば府中マイルは瞬発力に加えスタミナも必要等)がベースにありますが、該当レース(例えば安田記念なら安田記念)の過去の傾向による修正を受けます。さらに、当日の馬場状況(降雨など)による再修正を受けます。

この流れのなか、クッション値は、当日の馬場傾向に含まれます。この、当日の馬場傾向は、くわしくは別記事(馬場傾向の読み方・見方 今日のトラックバイアスと有利な脚質・枠・血統を調べる方法)で説明しますが、下のようなデータを集めます。

上位枠順上位脚質上位馬の直線経路
中京4R3-7(内枠‐外枠)先行・先行中‐内
中京5R2-7(内枠‐外枠)逃げ・先行内‐内
中京7R4-6(中枠‐中枠)逃げ・先行中‐外
中京9R6-8(中枠‐外枠)差し・追込内‐外
予想するレース

この情報にクッション値を加えればよいでしょう。

上位枠順上位脚質上位馬の直線経路クッション値
中京4R3-7(内枠‐外枠)先行・先行中‐内10.7
中京5R2-7(内枠‐外枠)逃げ・先行内‐内
中京7R4-6(中枠‐中枠)逃げ・先行中‐外
中京9R6-8(中枠‐外枠)差し・追込内‐外
予想するレース
中京11R
中・外枠有利差し9(予測値)
人気・人気薄が互角
逃げ先行と差し追込が互角

上の表は、2021年の高松宮記念の日のもので、クッション値は10.7の発表でしたが、当日は雨が降り続き、レース時には9前後で柔らかめになっていたことが予想されます。このページの表現では、「特良」「稍良」の間くらいの馬場状態でした。

スピード型(特良)、スタミナ型(稍良)の判断が微妙な馬場でしたが、逃げ馬(モズスーパーフレア)がハイペースで飛ばしたため、どちらかというとスタミナが問われた形になりました。(差せる馬は、直線まで余力を残せるため、スタミナがあると言えます)

結果は、外枠の2頭が、馬場の外を差す形となりました。また、人気薄も対等に戦える馬場でしたが、実際に16番人気が4着に健闘しています。

クッション値は、このような形で利用するとよいでしょう。

関連 馬場傾向の読み方・見方 今日のトラックバイアスと有利な脚質・枠・血統を調べる方法

このほか、メルマガ・マネードラゴン馬券塾でもくわしく解説しています。

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